ストック・トゥ・フローが示すもの
ストック・トゥ・フロー(S2F)は、コモディティ市場で使われてきた希少性の表し方です。ストックは現存する総量、フローは毎年新たに生産される量です。ストックをフローで割ると、年数で表した値になります。
ストック・トゥ・フロー = これまでの発行済み供給量 ÷ 過去365日間の発行量
比率が高いコモディティは、供給を膨らませにくいという性質があります。生産量が大きく増えても、総量はほとんど増えません。ビットコインの発行はルールに組み込まれた固定のスケジュールに従うため、フローは事前にわかっており、比率も予測どおりに上がっていきます。そのためこの比率は、ブロックチェーンから直接計算できる最もシンプルな指標の1つです。
ストック・トゥ・フロー(年)
比率がこのように変化する理由
新しいビットコインは、ブロック報酬を通じてのみ流通に加わります。ビットコインの誕生時、1ブロックごとに50 BTCが生み出されていました。この報酬は210,000ブロック(約4年)ごとに半減します。半減期と半減期の間はフローがほぼ一定で、ストックは増え続けるため、比率はじわじわと上がります。半減期にはフローが半分になり、その後の1年間で、直近365日間の集計期間が報酬の少ないブロックで埋まっていくにつれて、比率はほぼ倍になります。
下の表は、自社ノードのブロック高と新規発行量から計算しています。各半減期のブロックに到達した日を特定し、その前日の比率と1年後の比率を比べています。1年後は、集計期間が新しい報酬を完全に反映した時点です。
| 半減期 | 到達日 | 前日の比率 | 1年後の比率 | 変化 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 2012年11月28日 | 3.8 | 7.8 | 2.03× |
| 2 | 2016年7月9日 | 11.4 | 23.9 | 2.10× |
| 3 | 2020年5月11日 | 27.1 | 56.3 | 2.08× |
| 4 | 2024年4月20日 | 58.7 | 119.5 | 2.04× |
- 比率が初めて10年を超えたのは2015年4月15日、50年は2021年3月30日、100年は2025年2月9日です。
- これまでの最高値は2026年10月1日の123.2年です。
見方
- 水準は、新規供給がどれだけ希少かを示します。今日の比率では、過去1年間の新規発行によるストックの増加は1%を大きく下回ります。
- 階段状の変化は半減期によるもので、それ以外に比率を大きく動かす要因はほとんどありません。半減期の間に見られる小さな上下は、ブロックが10分間隔よりわずかに速く、または遅く生成されることによるものです。ハッシュレートが急速に伸びるとブロックが早めに生成され、その年のフローがわずかに増えます。
- この比率が示さないもの:需要については何も語りません。希少性だけで価格が決まるわけではなく、比率がどの水準にあるときにも、価格の上昇局面と下落局面の両方がありました。
ストック・トゥ・フローと価格モデル
この比率は、ビットコインの時価総額との関係をグラフにし、当てはめた線を将来へ延長するモデルによって有名になりました。こうしたモデルは「希少性が一定の関係で価値を決める」という強い仮定に立っており、その予測は長く議論の的になってきました。比率そのものはこうした仮定とは無関係で、単なる集計にすぎません。当サイトでは、この比率と、パワーロー(べき乗則)分位バンドなどストック・トゥ・フローに依存しない価格モデルを、それぞれ算出方法の説明付きで別のチャートとして公開しています。
その他の銘柄
当サイトがノードを運用している他のプルーフ・オブ・ワーク(PoW)チェーンでも、同じ比率を計算しています。
| 銘柄 | ストック・トゥ・フロー | 時点 |
|---|---|---|
| ライトコイン (LTC) | 59.4年 | 2026年10月24日 |
| ドージコイン (DOGE) | 31.5年 | 2026年10月24日 |
| ビットコインキャッシュ (BCH) | 122.7年 | 2026年10月24日 |
いずれも、各チェーンの自社ノードから同じ方法で計算しています。
ライトコインは840,000ブロックごとに報酬が半減するため、比率はビットコインと同じように階段状に上がります。ドージコインは供給量に上限がなく、1ブロックあたり10,000 DOGEの固定報酬を支払うため、ストックは際限なく増え続け、比率はゆっくりとしか上がりません。ビットコインキャッシュは、ビットコインと過去の履歴も発行スケジュールも共通しているため、比率もビットコインに近くなります。
算出方法
CryptoKeyholeは、2009年1月3日のジェネシスブロック以降のすべてのブロックを保持する自社のBitcoin Coreノードから、比率を次のように計算しています。
- 1日あたりの新規発行量。各ブロックのコインベースのアウトプット額から、そのブロックに含まれる他のトランザクションが支払った手数料を差し引いた額、つまり実際に生み出されたコインです。ブロックはタイムスタンプによってUTC基準の日付に振り分けます。
- ストック。その新規発行量の累計です。決して使用できないジェネシスブロックの50 BTCや、その後失われた可能性のあるコインも含みます。
- フロー。過去365日間の新規発行量の合計です。365日分すべてのデータが必要なため、比率は丸1年分の履歴がそろった時点から始まります。
- 比率。その日のストックを、その日までの1年間のフローで割った値で、40桁の10進演算で計算します。
マイナーが報酬を満額受け取らなかったことが何度かあり、その分のコインは生み出されていません。予定上の発行量ではなく実際の発行量を使うことで、比率はチェーンに実際に含まれる量を反映します。ストック側の詳しい解説はビットコインの供給量ガイドをご覧ください。
知っておきたい限界
- ストックには、失われたコインや使用できないコインも含まれます。そのため比率は、二度と動かないコインの分だけ流通供給量を過大に見積もることになります。その量を正確に知ることは誰にもできません。
- 年数で表す比率なので、金などの金属と比べたくなります。しかし、金属のストックとフローは鉱業調査にもとづく推定値であるのに対し、ビットコインの値は正確です。そのため、こうした比較は性質のまったく異なるデータを混ぜることになります。
- 比率はバリュエーション(価値評価)ではありません。比率は決まった段階を踏んで変化するため、それ単体では、発行スケジュールにすでに含まれている以上の情報はほとんどありません。
ライブツール:ビットコイン半減期カウントダウンでは、次の半減期までの残りブロック数と予想日を、自社ノードからリアルタイムで確認できます。

よくある質問
ビットコインのストック・トゥ・フロー比率とは?
これまでに発行されたビットコインの量(ストック)を、過去365日間に発行された量(フロー)で割ったものです。単位は年です。比率が120なら、過去1年のペースで現存する供給量をもう一度発行するのに120年かかることを意味します。
半減期ごとに比率が跳ね上がる理由は?
210,000ブロックごとに、マイナーが新しいブロックで受け取る報酬が半分になるため、ストックが増え続ける一方でフローは半減します。比率は直近1年間の発行量を使うため、上昇は1日で起こるのではなく、各半減期後の12か月にわたって分散します。
S2Fモデルは正確?
本ページで示しているのは比率で、これは発行量についての単純な事実です。比率を価格予測に変換するモデルは別の話です。こうしたモデルは価格が希少性だけで決まると仮定しており、その予測は広く議論されてきました。当サイトは価格予測を公開していません。
ライトコインやドージコインのストック・トゥ・フローは?
自社ノードでライトコイン、ドージコイン、ビットコインキャッシュについても同じ比率を計算しています。現在の値は本ページの表に掲載しています。ドージコインは供給量に上限がなく、1ブロックあたりの報酬が固定されているため、比率は階段状ではなく、ゆっくりと着実に上がります。
新規発行量の算出方法は?
自社のビットコインノードにあるすべてのブロックのコインベーストランザクションから算出しています。支払われた額から回収した手数料を差し引いたものが、実際に生み出された新しいコインです。マイナーが受け取れる額より少なく受け取ったことが何度かあります。受け取られなかったコインは生み出されておらず、集計に含めていません。
このページの数値は、公開されているチェーンデータと収集した市場データからCryptoKeyholeが算出し、1時間ごとに更新しています。各数値の算出方法とデータソースはチャートのリンク先に記載しています。本ページの内容は投資助言や予測ではありません。